コラム

結局いくらかかるのですか? ~不動産明渡編~不動産賃貸借 2016.09.21

長期間にわたる家賃の未払いが原因で賃貸借契約を解除したものの、一向に賃借人が建物を明け渡さない場合でも、賃貸人が賃借人の留守中に、強引に建物の中に入って、家具を捨ててしまうことは犯罪です。建物の明け渡しを実現するには、裁判手続きを起こさなくてはなりません。

ここでは、賃料未払いが原因で、建物賃貸借契約を解除し、建物の明け渡しを求める場合、どのような手続きが必要で、また、いくらくらいの費用がかかるのかについてご説明いたします。

1 賃貸借契約を解除し明渡交渉をする

賃料滞納が長期間にわたっている場合には、「○日までに未払い賃料を全て支払ってください」「期間内に支払がない場合には賃貸借契約を解除しますので、建物を明け渡してください」という趣旨を記載した配達証明付き内容証明郵便を発送することが一般的です。

この場合、発送費用として、約1200円から2000円程度かかります。普通郵便の場合には、費用は抑えられますが、相手から「そんな郵便は受け取っていないから、解除は無効だ」と言われるリスクがあります。配達証明付き内容証明郵便は、文書の内容と、相手が郵便を受け取った日が明らかになりますので、きちんと解除の意思表示をしたことを、後の裁判で明らかにするためにも、配達証明付き内容証明郵便を利用するべきだといえます。

定められた期間内に、未払い賃料の支払いがない場合にも、「賃貸借契約を解除します」という趣旨の、配達証明つき内容証明郵便を発送することが一般的です。

2 占有移転禁止の仮処分を行う

未払賃料の支払いを求めたにもかかわらず、支払がない場合、いよいよ裁判を提起することになります。しかし、訴訟の提起中に、賃借人(または不動産の占有している第三者)が、他者に建物を無断転貸してしまうと、賃借人に対して勝訴判決を得ても、明渡の強制執行ができなくなってしまいます。

このような事態を回避し、建物の明け渡しを確実なものにするために、占有移転禁止の仮処分を行うことがあります。占有移転禁止の仮処分を行っておけば、仮に訴訟提起後に、賃借人が第三者に建物を占有させた場合でも、有効に強制執行を行うことができます。

しかし、占有移転禁止の仮処分を行うには、賃貸人側で裁判所に担保金を差し入れる必要があります。担保金の金額は、裁判所との協議によって決定しますが、居住用の建物で、そのまま賃借人が占有することは問題ない場合、担保金は賃料の3か月から6か月分となることが一般的です。担保金は最終的には賃貸人に返されるものですが、一時的に大きな負担となります。

また、担保金の他に、占有移転禁止の仮処分の申し立て費用が別途かかります。

3 裁判を提起する

仮処分を行っただけでは、まだ建物の明渡は実現しません。裁判を起こして、明渡を認めてもらう判決を取る必要があります。

裁判にかかる費用で主なものは裁判所に支払う手数料(印紙)代と、郵便切手(郵券)代です。建物明渡訴訟の印紙代は、明渡を求める建物の固定資産税評価額に応じて決められます。また、郵券代も、どこの裁判所に訴えを提起するかで異なりますが、被告(賃借人)が1人の場合には、5000円から6000円程度かかります。

また、訴訟提起に際して、建物の登記簿や固定資産評価証明書も取得する必要があります。

4 強制執行を行う

裁判に勝訴したとしても、賃借人が任意に明渡を行わない場合、強制的に建物の鍵を開け、家財道具を搬出して明渡を求めることができます。これを強制執行といいます。

強制執行を行うための申立費用として、金6万円から8万円程度が必要となります。また、申立費用とは別に、強制執行は執行補助者と言われる業者に依頼をする必要があるのですが、執行補助者への日当も支払う必要があります。日当の金額は、明渡を求める建物の広さや、搬出する家具などの動産の状況に応じて異なりますが、ワンルームタイプの部屋であれば30万円程度、ファミリータイプの部屋ならば50万円から100万円近くかかることもあります。これらのお金も、建物の明け渡しを求める賃貸人が用意しなくてはなりません。

5 弁護士に依頼をした場合

一連の手続きを弁護士に依頼する場合には、別途、弁護士費用がかかります。弁護士費用は事件の難易度に応じて異なりますが、内容証明の作成から強制執行までの手続きをすべて行う場合、事件の着手時に着手金として20万円から50万円、明渡完了時に報酬金として20万円から50万円程度の費用が発生するのが一般的です。

6 モデルケース

以上を前提に、家賃5万円のワンルームマンション(固定資産税評価額は50万円)の明け渡しを求める場合に、かかる費用をシミュレーションしてみます。ただし、あくまでも目安のため、必ずしもこの通りになるわけではありませんのでご参考程度としていただければと思います。

・内容証明作成から交渉:約2000円

・占有移転禁止の仮処分:申立費用2000円、担保金30万円

・訴訟:郵券約6000円、印紙代3000円、登記簿謄本等取得手数料約1000円

・強制執行:申立費用約8万円、執行補助者日当30万円

・弁護士費用:着手金30万円、報酬金30万円

合計:129万4000円(ただし、このうち担保金30万円は後日返還されます)

このように、建物明渡が行われるまでに、賃貸人は多額の費用を負担しなくてはなりません。また、未払いになっている賃料の回収も期待できないことが多く、賃貸人に生じる経済的な不利益は大きなものがあります。

また、それぞれの手続きがすぐに行われるわけではなく、交渉開始から明渡の実現まで、半年から1年程度の期間を要することも珍しくありません。

このような事態を回避するためにも、賃貸借契約締結のときには、賃借人の賃料の支払能力や人柄などを、きちんと確認することは、非常に重要であるといえるでしょう。

以上

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