コラム

親の土地の上に、自分名義の建物を建てて住んでいます②相続 2016.11.04

前回のコラムでは、親の土地の上に、自分名義の建物を建てて住んでいた場合の法律関係について、ご説明いたしました。それでは、相続が発生した場合、どのような問題が起きるでしょうか。親の土地の上に建物を建てている相続人をA、その兄弟をB、Cとして検討してみましょう。

なお、本稿は、一般的に多数を占めると思われる、「親に地代を支払っていない場合」すなわち「使用貸借」の場合に限定した記載となりますので、ご注意ください。

1 Aは家に住み続けることはできますか?

前項でも記載したとおり、親に地代を支払っていない「使用貸借」の場合、遺産分割協議終了までは、使用貸借の状態が続きますので、相続開始前の状態で、家に住み続けることはできます。

それでは、遺産分割協議終了後も家に住み続けたい場合、遺産分割では何をどのように定めればよいでしょうか。

2 土地をAの単独所有にする場合

土地を建物所有者である相続人Aが単独で相続することを考えてみましょう。土地がAのものになるので、法律関係はすっきりとしそうです。しかし、兄弟B、Cはどうなるでしょうか。

この点、ABCの親である亡Dに、預貯金など、不動産以外の資産があれば、その資産をB、Cで分けることが最も不公平感がないと思われます。例えば、土地の価値が3000万円だとした場合、亡Dに預貯金などが6000万円あれば、Aの取り分3000万円相当の土地、B、Cそれぞれ3000万円ずつの預貯金、と分けることが、それぞれの法定相続分(3分の1)に応じた公平な遺産分割であるといえます。

しかし、亡Dに十分な資産がない場合、例えば、上記の例で、亡Dの預貯金が1000万円しかない場合、例えばAの取り分3000万円相当の土地、B、Cそれぞれ預貯金500万円という分割方法は、Aが遺産の4分の3を相続し、B、Cがそれぞれ8分の1しか相続できないことになり、B、Cに不満が残ります。

この場合、Aは、本来ならばB、Cが相続によって得られるはずであるお金を、B、C支払う方法で、土地を相続することができます。すなわち、ABC兄弟の法定相続分はそれぞれ3分の1ですから、遺産総額が4000万円である場合、本来、A、B、Cは1333万円を相続することができます。しかし、土地をすべてAが相続した場合、B、Cはそれぞれ500万円しか相続できません。そこで、Aが、B、Cに対して、1333万円から500万円を差し引いた833万円を支払うことで、B、Cが遺産の3分の1相当額を取得できるようにするのです。このような遺産の分割方法を「代償分割」といい、AからB、Cに支払われるお金を「代償金」といいます。

しかし、この方法を取るには、A自身にも十分な資力がなければなりません。

3 土地をABCの共有にする場合

亡Dに土地以外の財産がなく、かつAに十分な資力がないために、土地を単独の所有にすることが難しい場合、土地をABCの3分の1ずつの共有にすることが考えられます。

この場合、Aは土地について、共有とはいっても権利を有することになるので、土地上の建物に居住し続けることができます。ただし、Aが土地を独占的に使用することにより、B、Cは、Aと同じ権利を有しているにもかかわらず、土地を利用することができなくなります。このため、AはB、Cに対して地代相当額を支払う必要があります。

この方法は、Aの負担は少なく済むかもしれませんが、B、Cにとっては、不満の残る遺産分割方法かもしれません。また、将来的にはBが亡くなり、Bの子であるE、FとA、Cが土地を共有することになったり、Cが自らの土地の持分に設定した抵当権が実行され、全く関係のない第三者Gが持分を取得することになったりすることも考えられます。このように、土地の共有状態が長期間にわたる場合には、法律関係が複雑化するおそれがあることに注意が必要です。

4 土地を売却する場合

Aが代償金を用意できず、また、B、Cが土地の共有にも応じない場合、土地を売った代金を3人で分ける、というのが、一番公平な分け方だといえるかもしれません。その場合には、残念ながらAは建物を手放さなくてはならなくなるでしょう。建物を建てるためにローンを組んでいたような場合には、建物もないのにローンだけが残ってしまいかねません。

5 親が遺言書を遺していた場合

それでは、生前、Dが「土地はAに相続させる」という内容の遺言書を書いていた場合、どのようになるでしょうか。

民法上、相続人には、「遺留分」という、相続財産の中で最低限取得できる割合があります(民法1028条)。被相続人(D)の兄弟姉妹以外で、①直系尊属のみが相続人である場合には法定相続分の3分の1、②その他の場合には法定相続分の2分の1が、遺留分として認められます。設問の例ではABCの法定相続分である3分の1の2分の1、すなわち6分の1がそれぞれの遺留分となります。

例えば、亡Dの遺産として、土地が3000万円相当、預貯金が3000万円だとしたら、遺産の総額は6000万円、ABCそれぞれの遺留分はこの6分の1である1000万円ということになります。したがって、例えば土地をAが相続して、残りの預貯金をB、Cで2等分したとしても、B、Cの取り分は、法定相続分は下回りますが、遺留分である1000万円を超えるので、B、Cは他に何らかの権利を主張できません。

しかし、亡Dの遺産が3000万円相当額の土地しかなかった場合、それぞれの遺留分、すなわち最低保証額は6分の1の500万円になりますが、Aが土地をすべて相続すると、B、Cの取り分はゼロになってしまいます。このため、B、Cは、自らの遺留分が侵害されたとして、500万の権利を主張できるのです。

この場合でも、AがB、Cにそれぞれ500万円ずつを支払うことができれば問題ありませんが、Aにそれだけの資力がなかった場合には、本項3、4と同様の問題が起こり得ます。


このように、親の土地の上に建物を建てて住んでいる場合、親が健在なうちは問題ないかもしれませんが、ひとたび相続が起こると、非常に頭の痛い問題に発展していきます。

このようなことを回避するためには、できれば親の生前から、親を交えて兄弟で話し合い、相続に対しての共通認識を形成しておくのが望ましいといえるでしょう。

以上

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