コラム

亡夫名義の家だけは残したいんです② ~限定承認と不動産~相続 2017.01.22

Aさんの夫であるBさんは、多額の借金を遺して亡くなりました。とてもAさんが支払いきれる金額ではありません。しかし、相続放棄をすると、AさんはBさんと住んでいたBさん名義の土地建物からは出ていかなくてはならないようです。何かいい方法はあるでしょうか。

1 限定承認とは

限定承認とは、相続によって得た財産の限度においてのみ、被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることとされています(民法第922条)。

すなわち、Bさんにプラスの財産があれば、それをもって債務の支払いにあて、それでもプラスの財産が残れば、それをAさんや他の相続人が相続するというものです。マイナスの財産がプラスの財産を大きく上回っていたとしても、Aさんは自分の財産からマイナスの財産を支払う必要はありません。

限定承認は、被相続人(Bさん)の遺産のうちで、プラスの財産の方が大きいのか、マイナスの財産の方が大きいのか、判断がつきかねる場合に有効であるといわれていますが、手続が煩雑であるため、実際にはあまり利用されていないようです。

2 先買権とは

限定承認を行った場合、プラスの財産は原則としてすべて競売によって換価され、債権者に対する弁済を行うものとされています(民法第932条本文)。したがって、原則としてBさんの財産である土地建物は競売によって換価することになります。

しかし、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価にしたがって、その評価額を支払った時には、競売手続きを止めることができるとされています(民法932条但書)。この権利を「先買権(さきがいけん)」といいます。先買権は相続人の相続財産に対する愛着などから、特定の財産だけは手元に残したいという気持ちに配慮して設定されました。

したがって、Aさんの場合、先買権を行使することで、Bさん名義の土地建物が競売にかけられることを止めることができます。

具体的には、まずは家庭裁判所に相続財産の価額を評価する鑑定人の選任を求める家事審判の申立てを行います。相続財産が不動産の場合には、不動産鑑定士の先生が、鑑定人として選任されます。そして、鑑定人が相続財産の価額として評価した金額を相続財産管理人(限定承認をした相続人が複数あるときは、そのうちの1人が、限定承認時に相続財産管理人に選任されます)に支払うことで、相続財産の所有権を取得することができます。

すなわち、先買権とは、Aさんが、競売に先立って、Bさん名義の土地建物を正当な評価額で買い取ることができるという制度ということになります。

ただし、不動産の価額だけでなく、鑑定人の報酬などもAさんの負担になりますので、先買権が行使できるのは、Aさん個人に十分な資金がある場合に限られるでしょう。

3 担保権の実行のための競売について

それでは、Bさん名義の不動産にC銀行を債権者とする抵当権の設定がなされていたため、抵当権の実行のための競売手続きがなされた場合には、先買権の行使はできるでしょうか。

担保権の実行のための競売については、先買権の行使によってその手続きを止めることはできないと考えられています。しかし、抵当権者と交渉を行い、不動産の時価相当額を抵当権者に支払うことによって、先買権行使と同様の効果が得られる余地はあるといえます。

以上

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