コラム

土地の面積が聞いていたよりも狭かったのですが…不動産売買・税金 2017.04.25

Aさんはマイホームを建てるため、100㎡の土地を購入しました。しかし、いざ建物を建てようとすると、購入した土地の面積は90㎡しかないことが判明しました。これでは希望の間取りのマイホームが建てられない可能性があります。Aさんは土地の売主のBさんに、土地の購入費用の一部の返金を求めたり、不動産仲介業者のC社に対して責任を追及できないか考えています。

1 不動産登記簿と不動産登記簿上の面積

不動産登記簿とは、不動産の所在や面積、所有者の氏名や住所、不動産についての権利について記載された帳簿のことで、不動産の権利関係を誰でも分かるように明確することで、不動産取引の安全を図る制度です。

不動産売買の際は、不動産登記簿に記載されている面積が参考とされますが、以前は測量の水準が現在よりも低かったため、不動産登記簿に記載されている不動産の面積と、実際の面積が異なることは、珍しいことではありません。昔は固定資産税が安くなるからという理由で、実際よりも少ない面積で登記していた、なんていう話もあるくらいです。

2 公簿売買とは

ところでDさんは先祖代々から持っている土地を売ろうと思いますが、不動産登記簿に記載された土地の面積が、実際の面積と違う可能性もあります。この場合、Dさんは、自分で費用を出して、土地の面積を測量してから売りに出さなくてはならないのでしょうか。

この点、土地の実際の面積はどうあれ、不動産登記簿上の面積が正しいものとして売買をしましょう、というのを「公簿売買」といいます。

したがって、Dさんは土地を「公簿売買」の方法で売れば、土地の測量をしなくても良いことになります。

3 実測売買とは

実測売買とは、売買契約自体は不動産登記簿上の面積を基にして締結しますが、売買契約後、直ちに測量を行い、不動産登記簿上の面積と相違があれば、売買代金の清算を行うというものです。測量費用は売主の負担とされることが一般的です。

4 数量指示売買と瑕疵担保責任

設例のAさんの場合、実測売買であったならば、売買契約終了後、すぐに測量を行い、土地の面積が不動産登記簿に記載されているものよりも狭いことは判明したはずなので、公簿売買であったのではないかと思われます。そうだとすると、Aさんは売主のBさんに売買代金を減額してほしいということができないのでしょうか。

「当事者において、目的物の実際に有する数量を確保するため、その一定の面積、容積、重量、員数または尺度あることを売主が契約において表示し、かつ、この数量を基礎として代金額が定められた場合(最小判昭43・8・20)」を数量指示売買といい、実際の数量が指示された数量よりも少なかった場合、買主は売主に対して、瑕疵担保責任に基づき、代金減額を求めることができます(民法565条、563条1項)。

すなわち、例えば、100グラム100円のお肉を200グラム買ったはずなのに、実際には150グラムしかなかった場合、買主は売主に対してお肉50グラム分の代金を返すように請求できるのです。お肉の売買では当たり前のことですが、このことは土地についても同じように言えるでしょうか。

この点、最高裁平成13年11月22日判決は、①土地が住宅用の敷地として売買されたものであること、②代金額は坪単価を基準として決めることを基本として、坪単価の減額交渉が行われていたこと、③土地の買主が仲介業者に実際の面積の確認を求めるなどしていたこと、④仲介業者から実測面積が公簿面積に不足していた場合に代金額を減額しないということについて、買主が説明を受けたこともないこと、などの事実から、売買契約書の公簿面積の記載は、実測面積と同じだけあるものという趣旨で売買契約は締結されたとして、買主から売主に対する代金の減額を認めました。

平成13年の判決は、土地の売買の経緯について事実認定がなされた上での判断であり、すべての公簿売買に当てはまるわけではありませんが、事情によっては、売主へ代金の減額が請求できることもあります。

ただし、公簿売買の際には、「実際の土地の面積が実測と異なっていたとしても、売主及び買主は、売買代金の増減額を請求することができない」と、契約書に定められていることが一般的です。この場合には、代金の減額は原則として認められないと考えてよいでしょう。

5 仲介業者への責任追及

それでは、設例の場合、Aさんは仲介業者のC社に対して、実際の土地の面積が不動産登記簿に記載されているものよりも小さかったことについて、何か責任追及ができるでしょうか。

この点、仲介業者は買主に対して、不動産取引を行かどうかを決めるにあたって重要な点について説明する義務があるとされています。

設例の場合において、Aさんはマイホーム用に土地を購入したのですから、C社がAさんに対し、「この土地ならば絶対に希望する建物が建てられる」「実際の面積が不動産登記簿上の面積を大きく下回ることはありえない」などと説明していたことが明らかになった場合、AさんはC社に対して、購入した土地が予定よりも小さく、希望するマイホームが建てられなくなったことについて、損害賠償ができる余地があります。

ただし、C社が自分がAさんに行った説明の内容を認めなければ、Aさんが自らC社の説明内容を立証する必要がありますので、十分な証拠がない場合、AさんからC社に対する損害賠償請求が認められるのは難しいといえるでしょう。

以上

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