コラム

不動産売買と税金 ~不動産譲渡税について~不動産売買・税金 2017.06.07

Aさんは実家の土地建物を相続で取得しましたが、両親が亡くなった今では、実家は空き家状態です。Aさんは思い切って実家の土地と建物を売却しようと思っており、幸い、買い手も見つかりそうな状態です。ところで、実家を売ったことによって入るお金には、どのような税金がかかるのでしょうか?

1 不動産譲渡税について

不動産を譲渡、すなわち売却した時に利益が出た場合には、その利益に対して税金がかけられます。これを「不動産譲渡税」といいます。不動産譲渡税は、不動産の譲渡収入価格から不動産の取得費用と不動産の譲渡費用を差し引いた、譲渡所得に対して課税されます。

すなわち、2000万円で購入した不動産が、3000万円で売れたとき、差し引き1000万円から、不動産を売るときに発生した仲介手数料や測量費用合計200万円を控除した800万円について、税金がかかるという制度です。

※ただし、上記の例で、例えば2000万円でマンションを購入していた場合、建物は年数の経過とともに劣化して、価値が下がっていくものです。したがって、購入当時、建物価格が2000万円であったとしても、10年後にこれを売却する場合、建物の価値は10年分下がっているとして、その下がった分(償却費といいます)は、建物の取得価格から差し引かれます。

※不動産を取得したのがかなり以前のことで、取得費が分からない場合には、譲渡収入価格の5%を取得費とすることができます。

2 税率について

不動産譲渡税の税率は、売却した不動産をどのくらいの期間所有していたかによって異なります。不動産を譲渡した年の1月1日時点で、所有期間が5年以下の場合には短期譲渡所得(原則として税率は39.63%)、所有期間が5年を超える場合には、長期譲渡所得(原則として税率は20.315%)と判定され、それぞれの税率で所得税が計算されます。

短期譲渡所得の方が長期譲渡所得よりも税率が高いのは、投機的な不動産取引によって、不動産価格が高騰するのを予防するためです。

前述のとおり、不動産の所有期間については、不動産売買当時ではなく、不動産売買を行った年の1月1日となります。したがって、不動産を平成29年6月30日に売買した場合、平成29年1月1日が基準日となることにご注意ください。

また、設例のように、実家を相続した場合ですが、この場合には、被相続人の所有期間が通算されます。亡くなった親が20年間所有していた不動産を、親が亡くなって1年後に売却しても、長期譲渡所得と判断されます。

3 さまざまな控除について

それでは先の「800万円が譲渡所得である場合」を例に不動産譲渡税を計算してみると、所有期間が5年以下の場合、約317万円、所有期間が5年を超える場合には、約162万円となります。実際に計算してみると、皆さんが思っているよりも高いのではないでしょうか。

しかし、不動産譲渡税には、以下のような特例がありますので、特例が適用されれば、不動産譲渡税を安く抑えることができます。

(1) 3000万円の特別控除の特例

この特例は、自分が居住していた不動産、すなわちマイホームを売却した場合、所有期間にかかわらず、譲渡所得から3000万円を控除するというものです。

すなわち、譲渡所得が3000万円以下であった場合には、不動産譲渡税はかかりません。

(2) 長期譲渡所得の課税の特例

この特例は、10年以上居住していたマイホームの譲渡所得が6000万円以下の場合には税率を12.1%、6000万円を超える場合には、6000万円を超える部分について税率を17.1%とし、それに600万円を加えるというものです。

また、この特例は3000万円の特別控除と併用することができますので、例えば譲渡所得が6000万円であった場合、まず3000万円を控除し、残りの3000万円について、所定の税率を乗じるという計算を行います。

(3) 空き家にかかる譲渡所得の特別控除の特例

近年増加する空き家問題への対策として、相続して3年以内に空き家を譲渡した場合にも、譲渡所得から3000万円の控除が受けられる特例があります。しかし、この特例が適用されるのは、平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間に譲渡した場合に限られ、また、適用条件についても、以下のとおり定められています。

・家屋に関する要件

①相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていたものであること

②相続の開始の直前において当該被相続人以外に居住をしていた者がいなかったものであること

③昭和56年5月31日以前に建築された家屋(区分所有建築物を除く。)であること

④相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと

⑤相続した家屋を取り壊して土地のみを譲渡する場合には、取り壊した家屋について、相続の時から当該取壊しの時まで事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと、かつ、土地について、相続の時から当該譲渡の時まで事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと

・譲渡に関する要件

①譲渡価額が1億円以下であること

②家屋を譲渡する場合(その敷地の用に供されている土地等も併せて譲渡する場合も含む。)、当該譲渡時において、当該家屋が現行の耐震基準に適合すること

設例のAさんの場合には、条件次第では、この特例が適用される場合がありますので、専門家にご相談されることをお勧めします。

以上

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