コラム

正直、相続したくない土地があります相続 2018.01.09

先日、父親が亡くなったAさんは、相続手続を開始しました。Aさんの父親はB県に住んでおり、B県内の山林や田畑を所有していました。しかし、B県内の山林や田畑は、Aさんの父親の兄弟たちとの共有名義になっており、また、将来、AさんはB県に住む予定はないため、不動産の管理を行うのは現実的に大変です。そこで、Aさんは父親の預貯金や株式のみを相続して、不動産については相続を放棄したいと考えています。

1 遺産の一部のみを相続することはできる?

設例のAさんが希望するように、遺産の一部のみを相続することはできるのでしょうか。この点、相続とは、亡くなった方(被相続人)の権利や義務の全てが相続人に帰属する制度です。遺産の一部だけ放棄することが認められると、例えば預貯金などプラスの財産は相続しますが、借金などマイナスの財産は相続しません、ということができてしまい、被相続人にお金を貸していた人に大きな打撃を与えることになります。このため、遺産の一部のみを相続することは認められていません。

したがって、設例の場合、Aさんが父親名義の不動産だけを相続放棄することはできません。Aさんが父親名義の預貯金などを相続したいならば、不動産も相続しなくてはならないのです。Aさんとしては、不動産を相続することのデメリットと、預貯金等を相続することのメリットを慎重に判断して、父親の遺産を相続するか、相続放棄をするか、検討しなくてはなりません。

2 いらない不動産は自治体に寄付できますか?

いろいろな事情を勘案し、Aさんは父親の遺産を相続することにしました。しかし、B県内の土地は、一旦相続するとしても、自治体に寄付することを検討しています。このようなことはできるでしょうか。

一部の自治体では、土地の有効活用のため、地域を限定的に指定して土地の寄付を受け付けている場合もあるようです。しかし、これは非常に例外的なものであり、一般的には土地の寄付を受け付けている自治体はありません。

というのも、自治体が土地の寄付を受けても、税金で土地の管理などを行わなくてはならず、他方で、自治体の利益のために有効に活用できる見通しもありません。したがって、言ってしまえば、個人にとっていらない不動産は、自治体にとってもいらない不動産なのです。

Aさんの場合は、B県内の不動産をB県などに寄付することはほぼ不可能であると考えていいでしょう。

3 共有状態の解消について

設例のAさんは、父親名義の不動産を相続することにしました。しかし、やはりB県の不動産をAさんが管理するのは無理があります。そこでAさんは、自分の持分を、父親の兄弟である他の共有者に譲渡できないか検討することにしました。

共有不動産の共有状態を解消するには、共有持分の譲渡と、共有持分の放棄という2つの方法があります。

共有持分の譲渡とは、他の持分権者に自分の持分を譲渡、すなわち売ることを指し、共有持分の放棄とは、言葉のとおり、自分の持分を放棄することを指します。共有持分を放棄した場合には、Aさんの持分は、他の持分権者に帰属します。

共有持分の譲渡と、共有持分の放棄はどのように異なるかといえば、譲渡の場合は、持分を譲り受ける側、すなわち父親の兄弟との間で、譲渡の価格や日時などの条件について、合意ができなくてはなりませんが、共有持分権の放棄には、他の持分権者の合意はいらないとされています。

そうすると、Aさんの場合も、父親の他の兄弟と話し合いをすることなく、B県内の不動産の共有持分権を放棄してしまえば、結局、相続財産を一部放棄したのと同じ状態ができるといえそうです。

しかし、共有持分の「放棄」それ自体は、他の持分権者の同意を得なくてもできますが、共有持分の「放棄の登記」は、他の持分権者の協力がなくてはできません。また、持分権者のうちの1人(設例ではAさん)が、共有持分の放棄を行った結果、他の持分権者(設例では父親の兄弟)の持分が増える関係になるので、税務上はAさんから父親の兄弟に対して贈与が行われたとみなされ、場合によっては父親の兄弟に多額の贈与税が課せられる可能性があります。したがって、Aさんの場合、父親の兄弟がAさんの持分の放棄に協力することはあまり期待できません。

持分を放棄しても、その旨の登記ができないのでは意味がないので、Aさんとしては、不動産の共有状態を解消するには、父親の他の兄弟に持分を売却することを考えなくてはなりません。

4 共有状態の解消について

しかし、父親の他の兄弟も、B県の不動産は持て余している状態かもしれません。そうなると、不動産が共有のまま、次の世代、次の世代へと引き継がれていき、今よりももっと関係が複雑になるおそれがあります。

このような事態を回避するためには、共有持分権者が協力して、B県の不動産を隣地の所有者に売るということも検討しても良いかもしれません。

以上

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