コラム

限定承認の実務(3) ~限定承認の手続き・官報公告など相続 2018.11.05

父は多額の借金を遺して亡くなりましたが、父名義の不動産に高齢の母が住み続けられるように、限定承認の申立てをした上で先買権を行使しようと思っています。相続人は母Aと子Bである私の2名です。この度、限定承認の申述の申立てを行いました。その後の手続きについて教えてください。

◇ 官報公告

家庭裁判所に限定承認の申述の受理がなされたら、5日以内(相続財産管理人が選任された場合は10日以内)に、①限定承認をしたこと、②2か月以上の一定の期間内に、被相続人の債権者は債権の届け出をすること、③届け出がない場合には、弁済を受けられないことを、官報で公告しなくてはなりません(民法第927条1項、2項)。

また、それとは別に、すでに知っている債権者に対しては、個別に債権の届け出を催告する必要があります(民法第927条3項)。

実務上、この官報公告の手続きは、非常にやっかいです。というのも、法が求める「5日以内に官報公告を出す」というのは、現実的には不可能だからです。

官報公告の申し込みをしてから掲載までは、おおよそ1週間程度かかるのが通常であり、「法律で決まっているから5日で掲載してくれ」と依頼しても取り合ってもらえません。裁判所に相談をしても同様です。

官報公告の例だけでなく、限定承認は法律と実務が乖離していることが多い手続きです。しかし、限定承認は申立件数が非常に少ないせいか、これらの問題が顕在化することがあまりないため、問題点が改善されないまま、現在に至っているようです。

とはいえ、早期に公告をするように求めた法の趣旨は尊重されるべきであり、限定承認の申述受理から、できる限り速やかに官報に公告ができるようにするべきでしょう。限定承認の申述の申立てをしたら、裁判所にいつ受理されるのかを確認し、受理されたらすぐに官報公告の手続きを進められるように、スケジュールを調整しておく必要があります。

◇ 破産との関係

平成17年に破産法が改正される以前は、限定承認をする場合で、被相続人の債務超過が判明した際には、破産の申し立てをしなくてはならない旨、定められていました(旧破産法136条2項)。すなわち、破産法上、限定承認を行う場合で、被相続人の債務超過が判明した場合には、破産申し立てを行うことは義務とされていたのです。

しかし、民法では、限定承認の際に、被相続人の債務超過が判明した場合について、「それぞれその債権額の割合に応じて弁済をしなくてはならない」とのみ、規定がされています(民法929条)。つまり、必ずしも破産手続きによらなくても良いようにも解釈できます。このため、相続財産が債務超過の状態であっても、破産申し立てをしないでいる例も多くあり、実務上の混乱がありました。

しかし、平成17年に改正された新破産法では、「破産手続き開始申し立てをすることができる」(新破産法224条本文)として、破産手続きは義務ではなくなりました。

破産手続きには別途費用がかかり、また、さらに手続きが煩雑になることから、限定承認の際に破産申し立てをするのは、きわめて例外的な場合に留まるのではないかと思われます。

以上

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