コラム

違法民泊、どうにかなりませんか?民泊 2016.10.18

訪日外国人の急増により、宿泊施設の不足が問題になっている中、ホテルや旅館ではなく、一般の民家に旅行客を宿泊させる「民泊」が、広く知られるようになりました。

また最近では、一般の民家ではなく、投資用に購入したマンションを、ホテル予約と同じように、インターネット上で予約や代金の決済までできる「民泊ビジネス」が発展しています。

しかし、マンションの他の部屋の居住者と、民泊利用者との間でゴミ出しや騒音問題などでトラブルになることも少なくありません。

なお、このコラムは2016年9月末日現在の法律や裁判例に基づいたものであり、今後の法整備や裁判例によっては、必ずしも最新のものでない可能性があることにご注意ください。

民泊のホストについての問題点についてはこちらをどうぞ
「民泊のホストになろうと考えています ~民泊代行の落とし穴」

1 なぜ民泊ビジネスが急増しているのか

そもそも民泊ビジネスが社会問題になるまでに急増した背景には、訪日外国人の急増と、主要な観光地に十分な宿泊施設が少ないことが挙げられます。また、民泊はホテルや旅館よりも比較的安価で利用することができる点で、宿泊費を削減する志向のある旅行者に人気があります。

他方で、不動産オーナー側の立場になって考えてみましょう。例えば賃貸に出していれば、月10万円の賃料が入る物件を一人あたり1泊5000円(2人で1万円)で民泊として利用する場合、20日稼働すれば20万円の収入になります。つまり、賃貸用として利用するよりも、民泊として利用したほうが高収入につながるのです。

このため、観光客に人気の高いエリアのマンションは、民泊用として不動産投資家を中心に高い人気があるようです。

2 旅館業法違反について

一般的に、民泊として利用されている施設には、「旅館業法違反の可能性がある」と言われています。つまり、旅館業法上、「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」については旅館業と定義とされ(旅館業法2条参照)、旅館業の営業許可が必要になります。民泊サイトなどに掲載されているような民泊は、ほぼ旅館業法上の旅館業に該当するといえますが、残念ながら、民泊サイトに掲載されている宿泊施設は、その多くが旅館業法上の許可を得ていない、いわゆる違法民泊であるようです。

それでは、マンションの居住者は、マンションの一室が民泊として違法に利用されていることを知った場合、どのような対応が取れるでしょうか。

3 民泊サイト運営者への相談

民泊サイトに、自分が住んでいるマンションの他の1室が利用可能民泊として掲載されているのを見つけた場合、当該サイトの問い合わせ窓口に対して相談をすることが考えられます。

ただし、個人情報保護の観点から、民泊サイト運営者も、建物を民泊として利用している区分所有者の情報の開示にはなかなか応じてくれません。また民泊サイト運営者に苦情を申し入れても、サイト運営者側から区分所有者に対して苦情があった旨を通知する程度の対応にとどまっているようです(なお、建物を民泊として提供しているのは、区分所有者に限らず、例えば賃借人が大家さんに黙って民泊として提供しているような例もありますが、ここでは一律、「区分所有者」と表記します。)。

しかし、現在、民泊サイトにも多数の苦情が寄せられていると考えられ、これを放置することはコンプライアンス(法令遵守)上の問題もありますので、今後はサイト運営者側で改善策が出されることがあるかもしれません。

4 保健所への相談

旅館業法に関しては、各地の保健所が相談窓口になっています。そこで、違法民泊に困っているマンションの住民の方が、保健所に相談に行く場合があります。

しかし、保健所は事実上、事情調査を行い、行政指導を行うという程度の対応しかとれず、強制的に民泊をやめさせたり、建物を民泊として提供している区分所有者などを逮捕したり、ということはできません。また、最近、違法民泊の相談が急増していることもあり、事情の調査にはある程度の長い時間を必要とします。ただし、保健所が行政指導まで行えば、区分所有者としても、民泊の運営を諦めることが多いので、長期的に見れば、効果はあると言えるかもしれません。

ただし、保健所が違法民泊を調査したとしても、ある程度の広さのある部屋ならば、少し内装工事を行えば、旅館業の許可を取ることが可能になりますので、区分所有者が旅館業法の許可を得る可能性もあります。

5 警察署への相談

違法民泊の事実が悪質であるとして、警察に相談に行くことも考えられます。非常に悪質な場合には、警察も旅館業法違反として、区分所有者を逮捕することもあるようです。しかし、警察が対応するのは、例えば民泊を利用している旅行者が深夜に路上で騒ぐなど、周囲の治安が悪化しているような場合が典型的であり、ゴミ出しの問題に悩まされているというような場合には、積極的に警察が介入することは、あまり期待できません。

しかし、相談を受けた警察が事情の調査を行うことにより、区分所有者に対してプレッシャーがかかることは事実ですので、違法民泊の運営を中止することも期待できます。

6 取りうる法的手続き

それでは、違法民泊に悩む方は、何か法的手続きを取ることができるでしょうか。これについては、平成28年1月17日に、大阪地方裁判所で、管理組合から区分所有者に対して、建物を民泊として利用することの差止めを求めた仮処分について、これを認める決定がなされました。

ただし、差止めを求めることができるのは、マンション居住者個人ではなく、あくまでも管理組合(管理組合の理事長)となりますので、まずは、管理組合の総会や理事会などで、仮処分を申し立てることについての意思形成を図る必要があります。また、仮処分は、通常の訴訟手続と比較して早期の解決が期待できますが、あくまで「仮」の処分なので、後に判断が覆される可能性があります。その時の相手の不利益を填補するために、高額の担保金を差し入れる必要があることが多くあります。将来的に担保金は償還されますが、一時的には大きな出費となりますので、注意が必要です。

また、賃借人が居住用として貸したはずの建物を民泊として利用している場合、賃貸人は、無断転貸または用法違反を理由として賃貸借契約を解除し、建物の明け渡しを求めることができると考えられます。ただし、勝訴判決を得た場合でも、実際に民泊として建物を利用している旅行者には、建物明渡訴訟の判決の効力は及びませんので、建物明渡訴訟を提起する前に、「債務者不特定の占有移転禁止の仮処分」(民事保全法第25条の2)を申し立てる必要があります。この仮処分を行っておけば、建物明渡の強制執行を行う際に、誰が占有していたとしても、明け渡しを実現することができます。ただし、仮処分の申立てには、一定の金額の担保金を差し入れる必要があることは、差し止めの仮処分を申し立てる場合と同様です。

7 管理規約の変更

上記の方法はいずれも、建物が違法民泊として利用されてしまった後に取りうる、事後的な対策です。しかし、いずれも区分所有者が任意に違法民泊をやめない限り、解決までには相当の時間がかかることを覚悟しなくてはなりません。

それでは、マンションの部屋が違法民泊として利用されてしまうことを予防することはできるでしょうか。すなわち、管理規約で、居住用マンションの建物の1室を、民泊として利用することを禁止することはできるでしょうか。

マンションの区分所有権は、所有権の一種です。所有権とは、法令の制限内において、所有者による自由な使用収益が認められるもの(民法206条)ですので、原則として、マンションの区分所有者も、その所有するマンションの専有部分については、これを自由に使用収益することができると言えそうです。しかし、区分所有法30条には、「建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる」と規定されています。ここで言う「管理又は使用」の対象は、専有部分を含めたマンション全体を指す広義の管理を指すものと解されています。すなわち、マンション管理規約において、専有部分についても、その使用収益に一定の制限をすることも可能ということになります。

とはいえ、所有権は自由に使用収益ができることが原則ですから、管理規約によって無制限に専有部分の使用収益を制限することが認められるわけではなく、その制限が、マンション全体の「共同の利益」に適っており、かつ、その「共同の利益」が、権利の制限を受ける区分所有者の不利益を上回っていることが必要であると思われます。

それでは、すでに違法民泊として利用されているマンションの管理規約に、「民泊としての利用禁止」という条項を入れることはできるでしょうか。区分所有法上、管理規約の変更は、組合員および議決権の各4分の3以上の総会決議で決することができます。ただし、管理規約の変更の内容が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすときは、その影響を受ける組合員の承諾を得ることが必要です(区分所有法第31条1項)。

すなわち、民泊禁止の条項は、すでに民泊としてマンションの1室を利用している区分所有者に対して、特別の影響を及ぼすものと考えられますので、当該区分所有者の承諾を得なくてはならないと考えられます。そうであれば、事実上、すでに民泊としてマンションの1室を利用している区分所有者がいる場合、管理規約を変更するのは困難であると言わざるを得ないでしょう。

以上

→コラム一覧へ

CONTACT お問い合わせ

電話でのご予約
(平日 9:30~18:00)

TEL: 03-5946-9989

お問い合わせ


page top