コラム

限定承認の実務(1)~どんなときに限定承認をするべきか相続 2018.10.05

先日、父が亡くなったため、相続手続きを行わなくてはなりません。しかし、父には多額の借金があったようであり、父が亡くなった今でも債権者からの問い合わせが後を絶ちません。

このため、私たち家族は相続放棄を検討していますが、現在、高齢の母が居住している自宅のマンションは父の名義になっています。相続放棄をした場合、母は自宅マンションに住み続けることができなくなってしまいます。

このため、何かいい方法はないかと調べてみたところ、限定承認という手続きがあることを知りました。具体的にこれはどのような手続きなのでしょうか。

1 限定承認とは

民法第922条に、「相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ、被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる」という規定があります。この手続きを限定承認といいます。

これは、具体的にどういうことでしょうか。

亡くなった方(被相続人)のプラスの財産(預金)が100万円、マイナスの財産(借金)が1000万円だった場合の例で考えてみましょう。

・すべての財産を相続する場合(単純承認) 相続人は、100万円の預金も、1000万円の借金も全て相続します。 つまり、借金1000万円のうち、100万円の預金で返しきれない900万円については、相続人が自らの財産で返済していかなくてはなりません。

・限定承認を行う場合 相続人は、1000万円の借金を、100万円の範囲で返していけば、それで良いことになります。返しきれない900万円については自らの財産を切り崩してまで返す必要はありません。

・相続放棄をする場合 相続人は預金も借金も全て相続しません。

2 限定承認を行うメリット

限定承認の手続きは煩雑であるため、あまり利用がなされていないのが現状です。故人が多額の借金を抱えて亡くなった場合、相続放棄の手続きを取れば、それで遺族である相続人としては債務から解放されるため、あえて限定承認を行う必要もないといえるでしょう。このため、相続放棄の年間の申立件数が年間1万6000件程度あることと比べて、限定承認は800件程度しかありません。

しかし、相続放棄を行うと、設例の場合、被相続人名義の不動産を手放さなくてはならず、被相続人と同居していた生存配偶者が、高齢であるにもかかわらず、自宅から出ていかなくてはなりません。

この点、限定承認を行い、民法932条但し書きに規定された「先買権(さきがいけん)」を行使し、相続人が被相続人名義の不動産を購入することで、生存配偶者の居住を維持することができます。

つまり、限定承認を行えば、被相続人の遺産が債務超過の場合でも、被相続人名義の不動産を維持することができ、生存配偶者の居住を確保できるのです。なお、先買権は不動産以外の相続財産についても行使することができます。

限定承認のメリットは、この先買権が行使できるという点に尽きます。逆に言えば、被相続人の遺産が債務超過であっても、不動産や先祖から伝わる価値のある骨董品など、どうしても守りたいものがない限り、限定承認を行うメリットはないと言えるでしょう。

なお、先買権についてはこちらのコラムも合わせてご参照ください。
「亡夫名義の家だけは残したいんです②」

それでは限定承認を行うには、具体的にはどのようにしたら良いのでしょうか。次回以降、手続きについて解説いたします。

以上

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